Red Hat Enterprise Linux 5.4
リリースノート
全アーキテクチャ向けリリースノート
Copyright
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概要
2009年7月1日
本ドキュメントは、Red Hat Enterprise Linux 5.4 のリリースノートについて説明します。
本文書には、下記を含む Red Hat Enterprise Linux 5.4 (kernel-2.6.18-154.EL) ファミリーの製品を対象とするリリースノートが含まれています。
Red Hat Enterprise Linux 5 Advanced Platform for x86、AMD64/Intel® 64、Itanium プロセッサファミリー、 System p、System z
Red Hat Enterprise Linux 5 Server for x86、AMD64/Intel® 64、Itanium プロセッサファミリー、System p、System z
Red Hat Enterprise Linux 5 Desktop for x86、AMD64/Intel®
リリースノートは、Red Hat Enterprise Linux 5.4 に実装された改良機能や追加機能を対象としています。
注意
Red Hat Enterprise Linux 5.4 よりリリースドキュメントの形式が変更になり、リリースノートには重要機能の更新、バグ修正、技術プレビューの概要が含まれるようになりました。 新しい
テクニカルノート ドキュメントは、すべての更新パッケージや既知の問題、技術プレビューを詳細に説明します。
Red Hat Enterprise Linux 5.4 では、x86_64 ベースアーキテクチャの KVM (Kernel-based Virtual Machine) ハイパーバイザが完全サポートされるようになりました。 KVM は Linux カーネルに統合され、安定性や機能性に優れ Red Hat Enterprise Linux のハードウェアサポートを継承する仮想化プラットフォームを提供します。 KVM ハイパーバイザを使用した仮想化は、下記を含む多くのゲストオペレーティングシステムでサポートされています。
Red Hat Enterprise Linux 3
Red Hat Enterprise Linux 4
Red Hat Enterprise Linux 5
Windows XP
Windows Server 2003
Windows Server 2008
重要項目
Xen ベースの仮想化は完全サポートされますが、Xen ベースの仮想化には別バージョンのカーネルが必要となります。 KVM ハイパーバイザは通常のカーネル (Xen カーネル以外) のみで使用できます。
警告
Xen と KVM を同じシステムにインストールすることはできますが、デフォルトのネットワーク設定が異なります。 1 つのシステムには 1 つのハイパーバイザのみをインストールすることが強く推奨されます。
注意
Xen は Red Hat Enterprise Linux に同梱されるデフォルトのハイパーバイザです。 そのため、Xen ハイパーバイザに合わせてすべてのデフォルトが設定されています。 KVM に合わせてシステムを設定する方法は、仮想化ガイドを参照してください。
KVM を使用して仮想化を行うと、変更を加えなくてもゲストオペレーティングシステムの 32 ビットバージョンと 64 ビットバージョンを両方実行することができます。 I/O のパフォーマンスを向上させるため、準仮想化ディスクとネットワークドライバも Red Hat Enterprise Linux 5.4 に同梱されています。 KVM サポートの追加にあたり、libvirt ベースのツール (virsh
、virt-install
、virt-manager
など) もすべて更新されました。
KVM ハイパーバイザを使用した USB パススルーは、5.4 リリースでは技術プレビューとなっています。
保存や修復、ライブ移行、コアダンプなどの問題が解決したため、技術プレビューだった x86_64 ホストにおける Xen ベースの 32 ビット準仮想化ゲストは、Red Hat Enterprise Linux 5.4 にて完全サポートされるようになりました。
etherboot
パッケージが今回の更新に追加され、PXE (プリブート実行環境、Preboot Execution Environment) を使用してゲスト仮想マシンを起動できるようになりました。 このプロセスは OS がロードされる前に発生し、OS が PXE で起動したことを認識しないこともあります。 etherboot のサポートは KVM コンテキストでの使用のみに限定されます。
qemu-kvm
ベースの仮想マシンで spice プロトコルをサポートするため、qspice
パッケージが Red Hat Enterprise Linux 5.4 に追加されました。 qspice
にはクライアントやサーバー、ウェブブラウザのプラグインコンポーネントが含まれていますが、qspice-libs package
の qspice
サーバーのみが完全サポートされます。 qspice クライアント (qspice パッケージによって提供) と qspice mozilla プラグイン (qspice-mozilla パッケージによって提供) の両方は技術プレビューとして含まれています。 qspice-libs
パッケージに含まれている qemu-kvm
を併用するサーバー実装は完全サポートされます。 Red Hat Enterprise Linux 5.4 では、spice プロトコルの libvirt
はサポートされません。 Red Hat Enterprise Linux 5.4 では、Red Hat Enterprise Virtualization 製品を用いた spice
の使用のみがサポート対象となります。
クラスタとは、重要な実稼働サービスの信頼性やスケーラビリティ、可用性を高めるため、連携して動作する複数のコンピュータ (ノード) のことです。
Red Hat Enterprise Linux 5.4 のクラスタ化に関するすべての更新は、テクニカルノートに記載されています。 Red Hat Enterprise Linux におけるクラスタ化の詳細については、
Cluster Suite の概要 および
クラスタの管理 を参照してください。
自動ハイパーバイザ検出をサポートするため、Cluster Suite ツールがアップグレードされました。 Cluster Suite と KVM ハイパーバイザの併用は技術プレビューとなっています。
OpenAIS がマルチキャストだけでなく、ブロードキャストネットワーク通信も提供するようになりました。 OpenAIS のスタンドアロンでの使用と Cluster Suite との併用は技術プレビューの段階です。OpenAIS がブロードキャストを使用するよう設定する機能はクラスタ管理ツールと統合されていないため、手作業で設定する必要があります。
注意
Enforcing モードの SELinux は Cluster Suite ではサポートされないため、Permissive か Disabled モードを使用する必要があります。 ベアメタル PPC システムにおける Cluster Suite の使用はサポートされていません。 VMWare ESX ホストで Cluster Suite を実行するゲストや fence_vmware の使用は技術プレビューの段階です。 Virtual Center によって管理される VMWare ESX ホストのゲストで Cluster Suite を実行することはサポートされていません。
Cluster Suite を使用した異なるアーキテクチャのクラスタはサポートされません。 クラスタのすべてのノードは同じアーキテクチャでなければなりません。 Cluster Suite では、x86_64、x86、ia64 は同じアーキテクチャと見なされます。 そのため、これらのアーキテクチャを組み合わせたクラスタはサポートされます。
フェンシングはクラスタの共有ストレージよりノードの接続を解除することです。 フェンシングは共有ストレージより I/O を切り離すため、データの整合性を保護します。
Red Hat Enterprise Linux 5.4 では、HMC (ハードウェア管理コンソール、Hardware Management Console) を使用して管理される IBM 論理パーティション (LPAR) インスタンスに対する Power Systems のフェンシングサポートが技術プレビューとして追加されました
(BZ#485700)。 Cisco MDS 9124 および Cisco MDS 9134 のマルチレイヤファブリックスイッチに対するフェンシングサポートも技術プレビューとして追加されました
(BZ#480836)。
Red Hat Enterprise Linux の今リリースでは、fence_virsh
フェンスエージェントが技術プレビューとして提供されています。 fence_virsh
は、domU として稼働する 1 つのゲストが libvirt プロトコルを使用して別のゲストをフェンシングできるようにしますが、fence_virsh
は Cluster Suite ととは統合されていないため、この環境ではフェンスエージェントとしてはサポートされません。
また、以下のフェンシング関係の文書が Red Hat ナレッジベースに追加されました。
今回の更新で、GRO (Generic Receive Offload) のサポートがカーネルとユーザー空間アプリケーション
ethtool の両方に実装されました (
(BZ#499347))。 GRO システムは、CPU (中央処理装置、Central Processing Unit) の処理量を削減して、受信ネットワーク接続のパフォーマンスを向上します。GRO は LRO (Large Receive Offload) システムと同じ技術を使用しますが、より多くのトランスポート層プロトコルに適応することができます。 Intel® Gigabit イーサネットアダプタの igb ドライバや Intel 10 Gigabit PCI Express ネットワークデバイスの ixgbe ドライバなどを含むネットワークデバイスドライバに GRO のサポートが追加されました。
Netfilter フレームワーク (ネットワークパケットをフィルタするカーネルの一部) が更新され、DSCP (Differentiated Services Code Point) 値のサポートが追加されました。
bind
(Berkeley Internet Name Domain) パッケージは DNS (ドメインネームシステム、Domain Name System) プロトコルの実装を提供します。 これまで、権限のある (authoritative) 返答を受信する要求と、権限のない (non-authoritative) 返答を受信する要求を簡単に区別するメカニズムが bind にはありませんでした。 そのため、適切に設定されていないサーバーが拒否すべき要求に応答してしまうことがありました。 今回 bind が更新され、サーバー上の権限のないデータ (キャッシュされた再帰的な結果やルートゾーンのヒットなど) へのアクセスを制御する新しいオプション
allow-query-cache
が追加されました
(BZ#483708)。
5.4 の更新では、ファイルシステムに重要なサポートが追加されました。 ベースの Red Hat Enterprise Linux に
Filesystem in Userspace (FUSE)
カーネルモジュールとユーザー空間ユーティリティが追加され、ユーザーは未変更の Red Hat Enterprise Linux カーネルで独自の
FUSE
ファイルシステムをインストールし実行できるようになりました
(BZ#457975)。
XFS
ファイルシステムのサポートが技術プレビューとしてカーネルに追加されました
(BZ#470845)。 FIEMAP 入出力制御 (ioctl) インターフェースが実装され、ファイルの物理レイアウトを効率的にマップできるようになりました。 ファイルの断片化をチェックしたり、疎に割り当てられたファイルの最適化コピーを作成するため、アプリケーションは FIEMAP ioctl を使用することができます
(BZ#296951)。
さらに、カーネルの CIFS (共通インターネットファイルシステム、Common Internet File System) が更新されました
(BZ#465143)。 ext4 ファイルシステム (Red Hat Enterprise Linux に技術プレビューとして同梱) も更新されました
(BZ#485315)。
Red Hat Enterprise Linux 5.4 では、GFS2 (グローバルファイルシステム 2、Global File System 2) を単一のサーバーファイルシステムとして使用する方法 (クラスタ環境ではない場合など) が廃止されました。 高可用クラスタ化の必要がない GFS2 のユーザーは、ext3 や xfs などの別のファイルシステムに移行することが推奨されます。 xfs ファイルシステムは超大型のファイルシステム (16 TB 以上) を対象としています。 既存ユーザーのサポートは継続されます。
必須のセマンティックによると、
stat, write, stat
を完了するプロセスは、最初の stat コールによるファイルの
mtime
(最後に変更された時間) と 2 番目のstat コールによる
mtime
は異なることを確認します。 NFS のファイル時間はサーバーが厳密に管理するため、データが
WRITE NFS
のプロトコル操作によってサーバーに送信されるまでファイルの
mtime
は更新されません。 データをページキャッシュにコピーするだけでは
mtime
は更新されません。 これが、NFS がローカルファイルシステムと異なる点の 1 つになります。 そのため、書き込みのワークロードが高い NFS ファイルシステムでは、stat コールの待ち時間が長くなることがあります
(BZ#469848)。
ユーザー空間ツールが更新され、ext4 ファイルシステムの技術プレビューも更新されました。 ext4 は ext3 ファイルシステムにインクリメンタルな改良を加えたもので、Red Hat とLinux コミュニティによって開発されました。
注意
ext4 が技術プレビューとなっている以前のバージョンの Red Hat Enterprise Linux では、ext4 ファイルシステムに ext4dev
のラベルが付けられました。 今回の更新で、ext4 ファイルシステムには ext4
が付けられるようになりました。
samba3x と ctdb は x86_64 プラットフォームの技術プレビューとして提供されます。 Samba3x パッケージは Samba 3.3 を提供し、ctdb はクラスタ化 TDB バックエンドを提供します。 GFS ファイルシステムで samba3x と ctdb をクラスタノードのセットで実行すると、クラスタ化 CIFS ファイルシステムをエクスポートできます。 これらのコンポーネントは、クライアントとサーバーグループの samba パッケージよりインストールされたファイルと競合するため、別の子チャンネルに提供されます。
5.1. ALSA (Advanced Linux Sound Architecture)
Red Hat Enterprise Linux 5.4 の ALSA (Advanced Linux Sound Architecture) が更新され、HDA (HD オーディオ、High Definition Audio) のサポートが向上されました。
ATI ビデオデバイスの ati
ドライバが更新されました。
Intel の統合ディスプレイデバイスに対する i810
ドライバと intel
ドライバが更新されました。
Matrox ビデオデバイスの mga
ドライバが更新されました。
nVidia ビデオデバイスの nv
ドライバが更新されました。
これまで、CD/DVD 統合ドライブが内蔵されている一部のラップトップでは、ドッキングステーションへの取り付けや取り外しの際に、ドライブが認識されないことがありました。 この場合、システムを再起動しないとドライブにアクセスできませんでした。 今回の更新で ACPI ドッキングドライバがカーネルで更新されたため、この問題は解決しました
(BZ#485181)。
SystemTap
が完全サポートされるようになり、最新のアップストリームバージョンへリベースされました。 今回の更新には、共有ライブラリによるユーザー空間プローブの改善、実験的な DWARF のアンワインド、dtrace と互換性のあるマーカを提供する新しい <sys/sdt.h>
ヘッダファイルが含まれます。
また、今回のリベースにより debuginfo-less
操作のサポートが向上しました。 タイプキャスティング (@cast 演算子を使用) やカーネルトレースポイントのプローブがサポートされるようになりました。 debuginfo-less
操作を妨害していた 'kprobe.*'
プローブのバグが複数修正されました。
SystemTap のドキュメントに改良が加えられました。 新しい 3stap
機能は、SystemTap のプローブや関数に関する便利な man ページをユーザーに提供します。 systemtap-testsuite
パッケージはより大きなサンプルスクリプトのライブラリを提供します。
SystemTap のリベースに関する詳細は、テクニカルノートの「パッケージの更新」にある「SystemTap」の項を参照してください。
Systemtap のトレースポイントはカーネルの重要セクションに置かれ、システム管理者によるコードのパフォーマンス分析や、コードのデバッグを可能にします。 Red Hat Enterprise Linux 5.4 では、カーネルサブシステムの以下のセクションに技術プレビューとしてトレースポイントが追加されています。
Gnu Compiler Collection バージョン 4.4 (GCC4.4) が技術プレビューとして今回のリリースに追加されました。GGC には C コンパイラ、 C++ コンパイラ、 Fortran コンパイラとサポートライブラリが含まれています。
glibc の新しい MALLOC 動作: 多くのソケットやコアにおけるスケーラビリティを向上するため、アップストリームの glibc が最近変更されました。 独自のメモリプールにスレッドを割り当て、場合によってロッキングが行われないようにすることでスケーラビリティを向上します。 メモリープールに使用する追加のメモリ量は、環境変数の MALLOC_ARENA_TEST や MALLOC_ARENA_MAX を使用して制御できます。
MALLOC_ARENA_TEST はメモリプールの数がこの値に達したらコア数のテストを実行するよう指定します。 MALLOC_ARENA_MAX はコア数に関係なく使用するメモリプールの最大数を設定します。
RHEL 5.4 リリースでは、この機能がアップストリーム malloc の技術プレビューとして glibc に統合されています。 スレッド毎のメモリプールを有効にするには、環境変数の MALLOC_PER_THREAD を環境に設定する必要があります。 今後のリリースでmalloc のこの動作がデフォルトとして導入された後、環境変数 MALLOC_PER_THREAD は廃止されます。 malloc リソースが競合する場合はこのオプションを有効にしてみてください。
仮想環境では、タイマ割り込みを数えて時間を管理するため、Red Hat Enterprise Linux の 64 ビットカーネルのタイムキーピングが困難なことがあります。 仮想マシンのスケジュール解除や再スケジュールによってタイマ割り込みが遅延することがあるため、タイムキーピングに不整合が生じることがあります。 今回のカーネルリリースはタイムキーピングアルゴリズムを再設定し、時間経過カウンタを基にタイムキーピングを行います (
Bugzilla #463573)。
スタックの合計サイズが ~4GB を越えると、64 ビットでスレッドされたアプリケーションが
pthread_create()
で大幅に遅くなりました。 これは、
glibc
は
MAP_32BIT
を使用してスタックを割り当てるためです。
MAP_32BIT
の使用はレガシー実装であるため、64 ビットアプリケーションを拘束しないよう、今回の更新で新しいフラグ(
MAP_STACK mmap
) が追加されました (
Bugzilla #459321)。
更新には、TSC がディープ C ステートで稼働し続けるよう促す機能ビットが含まれています。 このビットは
NONSTOP_TSC
で、
CONSTANT_TSC
と共に動作します。
CONSTANT_TSC
は TCS がP/T-ステートとは関係のない一定頻度で実行されることを示し、
NONSTOP_TSC
は TSC がディープ C ステートで停止しないことを示しています (
Bugzilla #474091)。
今回の更新には、 i386、i486、i586、i686 アーキテクチャ向けにビルドされた kernel-devel パッケージに
asm-x86_64
をヘッダを追加するパッチが含まれています (
Bugzilla #491775)。
今回の更新に含まれる修正により、i386 アーキテクチャで
memmap=X$Y
をブートパラメータとして指定すると、新しい BIOS マップが作成されるようになりました (
Bugzilla #464500)。
今回の更新には、以前のカーネルリリースで発生したマスク不可能な割り込み (Non-Maskable Interrupt、NMI) の問題を修正するパッチが追加されています。 この問題は、Intel プロセッサ各種に発生し、NMI ウォッチドッグが「stuck」したという報告をシステムが行う原因となっていました。 NMI コードの新しいパラメータによってこの問題が修正されました (
Bugzilla #500892)。
モジュール powernow-k8 パラメータを /sys/modules にエクスポートするよう機能が修正されました。 以前、この情報はエクスポートされませんでした (
Bugzilla #492010)。
今回のカーネルリリースには、Cell プロセッサの
spufs
(Synergistic Processing Units file system) を更新する複数のパッチが含まれています (
Bugzilla #475620)。
show_cpuinfo()
を実行すると、論理 PVR Power7 プロセッサアーキテクチャが「unknown (未知)」として
/proc/cpuinfo
に表示される問題が存在しました。 今回の更新では、
show_cpuinfo()
が Power7 アーキテクチャを Power6 として識別するパッチが追加されました (
Bugzilla #486649)。
今回の更新には、System P プロセッサを使用するマシンに MSI-X (メッセージシグナル割り込み、Message Signaled Interrupt) サポートを追加/向上する複数のパッチが追加されました。 (
Bugzilla #492580)。
下記を含む IBM System z マシン向けの様々な新機能が Red Hat Enterprise Linux に導入されました。
アップストリームカーネルの raw デバイスへのサポートは以前廃止されましたが、カーネルへのサポートが復活しました。 そのため、Red Hat Enterprise Linux 5.4 でも raw デバイスへのサポートも復活しました。 また、initscripts パッケージが更新され、以前廃止された raw デバイスの機能が追加されました
(BZ#472891)。
mmu-notifiers
なしで KVM guest-smp tlb がフラッシュすると、メモリが破損することがありました。 これは、他の
vcpu
がゲストモードで書き込みを行っているのに KVM がカーネルの freelist にページを追加することがあったからです。 この更新により、カーネルへの
mmu-notifier
サポートが追加されました。 また、既存ドライバによって
mm_struct
が拡張され、 kABI チェックが失敗する原因となっていた以前のパッチに存在するバグが修正されました。 構造サイズが拡張されないよう、未使用のパディングに存在するインデックスを使用してバグが修正されました (
Bugzilla #485718)。
これまで、ポインタや署名演算のオーバーフローのラップは Linux カーネルでは定義されていませんでした。そのため、
GCC (GNU C Compiler) がラップされていないことを前提とし、カーネルがオーバーフローのテストに必要な演算を最適化しようとすることがありました。 今回の更新では、ラップ動作を定義するため
-fwrapv
変数が
GCC CFLAGS
追加されました (
Bugzilla #491266)。
最近 TPC-C (Transaction Processing Council) のベンチマークによって、プロセスがハイエンドシステムの同じメモリを競合する問題が発見されました。 今回の更新には、直接 IO を使用し、パフォーマンスを大幅に向上する (最大9-10%)
fast-gup
パッチが含まれています。 今回の更新は十分テストされ、スケーラビリティを向上するため 5.4 カーネルで使用されます。 詳細は
article を参照してください (
Bugzilla #474913)。
新しい調整可能パラメータがカーネルに追加され、反復毎に
kupdate
がディスクに書き込める最大変更ページ数を管理者が変更できるようになりました。 新しい調整可能パラメータ
/proc/sys/vm/max_writeback_pages
のデフォルトは、
kupdate
の反復毎に最大 1024 ページが書き込める
1024
または 4MB になります(
Bugzilla #479079)。
プロセス毎に IO の統計監視を補助するため、新しいオプション (
CONFIG_TASK_IO_ACCOUNTING=y
) がカーネルに追加されました。 このオプションは、実稼働環境でトラブルシューティングの補助を行います (
Bugzilla #461636)。
これまでのカーネルでは、バックアッププロセスによって DB2 サーバーの応答性が低下しました。 これは、マップされていないページキャッシュメモリの半分以上がダーティである場合、
/proc/sys/vm/dirty_ratio
によってプロセスがページキャッシュメモリに書き込みできないことが原因でした (
dirty_ratio
が 100% に設定されている場合でも同様)。 今回のカーネルの更新により、この動作が修正されました。
dirty_ratio
が 100% に設定されると、システムがページキャッシュへの書き込みを制限しないようになりました (
Bugzilla #295291)。
これまでカーネルの RAM ディスクドライバにあった
rd_blocksize
オプションは、妥当なシステム負荷で大きな RAM ディスクを使用するとデータが破損する原因となっていました。 今回の更新で、必要ないオプションが削除され、データ破損の問題が解決されました (
Bugzilla #480663)。
getrusage
はプロセスのリソース使用率を確認するために使用されます。 問題の診断やリソースの使用についてデータを収集するのに便利です。
getrusage
が問い合わせたプロセスが子プロセスのスレッドを生成した場合、
getrusage
は親プロセスのみを確認し、子プロセスは問い合わせないため、正しくない結果が取得されました。 今回の更新では
rusadge_thread
が実装され、このような状況でも正確なリソース使用率が取得できるようになりました (
Bugzilla #451063)。
ヘッダ
/usr/include/linux/futex.h
が C ソースコードファイルのコンパイルに干渉し、エラーが発生しました。 今回の更新では、問題のあったカーネルのみの定義が修正され、コンパイルのエラーが解決されました (
Bugzilla #475790)。
これまでのカーネルでは、パニックや oops の出力メッセージにカーネルバージョンが特定されていませんでした。 今回の更新では、oops とパニックの出力にカーネルバージョン情報が追加されるようになりました (
Bugzilla #484403)。
リリース 2.6.18 では、glibc パッケージのカーネルヘッダを提供するようカーネルが設定されていました。 このプロセスによって、複数ファイルのインクルードが不適切にマークされました。
serial_reg.h
ファイルが不適切にマークされ、
kernel_headers
rpm に含まれませんでした。 これにより、他の rpm のビルドに問題が発生する原因となっていました。 今回の更新により、
serial_reg.h
ファイルが追加され、この問題が修正されました (
Bugzilla #463538)。
HP Unified Parallel C (UPC) 製品のプロセスマネージャである
upcrund
が、サブスレッドによってフォークされた子プロセスに対して
setpgid()
を呼び出す際に、ESRCH の結果を返信し、異常が発生することがありました。 今回の更新によって、この問題を修正するパッチが追加されました (
Bugzilla #472433)。
実行プロセスに関するバックトレース情報を表示する機能が
sysrq-t
に追加されました。この機能はハングしたシステムのデバッグに使用できます (
Bugzilla #456588)。
Red Hat Enterprise Linux 5.4 にコアダンプの生成に関する機能が追加され、カーネルのデバッグが改善されました。 コアダンプ (メモリスナップショット) はシステムやカーネルクラッシュのデバッグを行うのに便利です。 今回の更新により、ヒュージページ (hugepage) を使用するシステムでコアダンプを実行できるようになりました
(BZ#470411)。 また、
makedumpfile
コマンドを使用してコアダンプファイル (vmcore) よりカーネルパニックメッセージを抽出できるようになりました
(BZ#485308)。
スロットリング状態 (T-State) 通知のサポートがカーネルの ACPI (Advanced Configuration and Power Interface) 実装に追加されました。 T-State 通知の追加により、データセンターの電源管理に対する Intel® Intelligent Power Node Manager の使用が向上されます
(BZ#487567)。
8.3.1. OFED (Open Fabrics Enterprise Distribution) ドライバ
OFED (OpenFabrics Alliance Enterprise Distribution) は、Infiniband や iWARP のハードウェア診断ユーティリティ、Infiniband ファブリック管理デーモン、Infiniband/iWARD カーネルモジュールローダー、RDMA (リモート直接メモリアクセス、Remote Direct Memory Access) 技術を使用するアプリケーションを書くためのライブラリや開発パッケージの集合です。Red Hat Enterprise Linux は、Infiniband/iWARP/RDMA ハードウェアサポートの完全スタックとして OFED ソフトウェアスタックを使用します。
Red Hat Enterprise Linux 5.4 では、OFED の以下の機能がアップストリームバージョン 1.4.1-rc3 に更新されました。
RDMA (リモート直接メモリアクセス、Remote Direct Memory Access) ヘッダ
(BZ#476301)
さらに、以下の OFED ドライバがアップストリームバージョン 1.4.1-rc3 に更新されました。
注意
開発途上である OFED の技術を最大限に提供するため、Red Hat はアップストリームの OFED コードベースを綿密に追求しています。 そのため、Red Hat はマイナーリリースではアップストリームのプロジェクトに合わせて API/ABI の互換性のみを維持します。 これは、Red Hat Enterprise Linux の開発における通常の慣行とは異なる例外となります。
ボンディングドライバがアップストリームバージョンへ更新されましたが、この更新により symbol/ipv6 モジュールの依存関係が発生しました。 そのため、 /etc/modprobe.conf
ファイルに install ipv6 /bin/false
行を挿入して IPv6 を無効にすると、5.4 のボンディングドライバ更新が原因でボンディングカーネルモジュールがロードしませんでした。 モジュールを正しくロードするには、 install ipv6 /bin/false
行を install ipv6 "disable=1
に置き換える必要があります。
Intel® I/OAT (Intel® I/O Acceleration Technology) がバージョン 2.6.24 に更新されました
(BZ#436048)。
igbvf
ドライバが更新され、Intel 82576 Gigabit イーサネットコントローラに仮想関数のサポートが提供されるようになりました
(BZ#480524)。
Intel 10 Gigabit PBetaCI Express ネットワークデバイスの
ixgbe
ドライバがバージョン 2.0.8-k2 に更新されました。 この更新により、
ixgbe
ドライバの GRO サポートも有効になりました
(BZ#472547、 BZ#499347)。
cnic
ドライバが追加され、
bnx2
ネットワークデバイスに iSCSI (Internet Small Compuer System Interface) のサポートが提供されるようになりました
(BZ#441979)。
Broadcom Everest ネットワークデバイスの
bnx2x
ドライバがバージョン 1.48.105 に更新されました
(BZ#475481)。
bnx2i
ドライバが追加され、
bnx2x
ネットワークデバイスの iSCSI サポートが提供されるようになりました
(BZ#441979)。
Chelsio T3 ネットワークデバイスファミリの cxgb3 ドライバが更新され、SCSI TOE (TCP Offload Engine) と GRO (Generic Receive Offload) のサポートが有効になりました
(BZ#439518、
BZ#499347)。
NVIDIA nForce デバイスの
forcedeth
イーサネットドライバがバージョン 0.62 に更新されました
(BZ#479740)。
Marvell Yukon 2 チップセットを使用するイーサネットコントローラの sky2 ドライバが更新されました
(BZ#484712)。
Cisco 10G イーサネットデバイスの enic ドライバがバージョン 1.0.0.933 に更新されました
(BZ#484824)。
Intel PRO/1000 イーサネットデバイスの e1000e ドライバがアップストリームバージョン 1.0.2-k2 に更新されました
(BZ#480241)。
Emulex Tiger Shark 統合ネットワークアダプタの be2net ドライバが技術プレビューとして追加されました。
bnx2
ドライバが iSCSI をサポートするようになりました。
bnx2i
ドライバは
cnic
モジュールより
bnx2
ドライバにアクセスし、 iSCSI オフロードのサポートを提供します。
bnx2i
を管理するには、
iscsi-initiator-utils
パッケージを使用します。
bnx2i
設定の説明は、
/usr/share/docs/iscsi-initiator-utils-< バージョン>
/README
ファイルの
section 5.1.2 を参照してください (
BZ#441979 and
BZ#441979)。
今リリースに含まれる bnx2i
バージョンは IPv6 をサポートしていません。
md
ドライバが更新され、
ビットマップのマージ がサポートされるようになりました。 この機能によって、データの複製を行う際に完全再同期化が必要なくなります。 (
BZ#481226)。
今リリースの scsi
レイヤには次の更新が含まれます。
アップストリームにおける修正の適応や、iSCSI TOE デバイスのサポートを提供するため、
cxgb3
ドライバが更新されました (
BZ#439518)。
今回のリリースに含まれる cxgb3i
バージョンは IPv6 をサポートしていません。
今回のリリースには新しい mpt2sas
ドライバが含まれます。 mpt2sas
ドライバは LSI Logic の SAS-2 アダプタファミリーをサポートします。 SAS-2 は最大データ転送率を 3Gb/s から 6Gb/s へ向上します。
mpt2sas
ドライバは
drivers/scsi/mpt2sas
ディレクトリにありますが、従来の
mpt
ドライバは
drivers/message/fusion
ディレクトリにあります (
BZ#475665)。
aacraid
ドライバがバージョン 1.1.5-2461 に更新されました。 今回の更新は、キュースキャンやコントローラの起動問題などのバグに対して、アップストリームによる修正が適応されています (
BZ#475559)。
aic7xxx
ドライバの更新により、最大 I/O サイズが拡大されました。 これにより、サポート対象のデバイス (SCSIテープデバイスなど) が書き込みする際のバッファが大きくなりました。
cciss
ドライバが更新され、メモリ BAR ディスカバリや rebuild_lun_table
、MSA2012 スキャンスレッドに影響するバグに対してアップストリームの修正が適応されました。 今回の更新により、cciss
の設定変更も適応されました。
fnic
ドライバがバージョン 1.0.0.1039 に更新されました。 これにより、アップストリームによる複数のバグ修正が適応され、
libfc
モジュールと
fcoe
モジュールが更新されました。 また、ランタイム時にデバッグロギングを制御する新しいモジュールパラメータが追加されました (
BZ#484438)。
ipr
ドライバが MSI-X 割り込みをサポートするようになりました (
BZ#475717)。
lpfc
ドライバがバージョン 8.2.0.48に更新されました。 これにより、近日リリース予定の OEM プログラムに対するハードウェアサポートが有効になります。 今回の更新により、下記を含むバグ修正も適応されました (
BZ#476738 and
BZ#509010)。
仮想化されたファイバーチャンネルスイッチがサポートされるようになりました。
エラーアテンション割り込みをポーリングできるようになりました。
vport create
および delete loop
でのメモリーリークの原因となっていたバグが修正されました。
今回の更新で、
lpfc
ドライバが
HBAnyware 4.1 と
OneConnect UCNA をサポートするようになりました (
BZ#498524)。
MPT fusion
ドライバがバージョン 3.04.07rh v2 に更新されました。 この更新により以下を含むバグ修正が適応されました (
BZ#475455)。
PAE カーネルでシステムを起動できない原因となっていた MPT fusion
ドライバのバグが修正されました。
ドライバがアンロードする際、コントローラが READY_STATE
に設定されるようになりました。
デバイスをトランスポート層に追加する前に、mptsas
ドライバが TUR
(Test Unit Ready) コマンドと Report LUN
コマンドを実行するようになりました。
突然 mptctl_ioctl()
が大量の yet benign カーネルエラーメッセージを発行する原因となっていたパッチが戻されました。 今回のリリースでは、 mptctl_ioctl()
はこのようなカーネルエラーメッセージを発行しなくなりました。
megaraid_sas
ドライバがバージョン 4.08-RH1 に更新されました。 今回の更新により、以下を含むアップストリームによる向上機能や修正が適応されました (
BZ#475574)。
mvsas
ドライバがバージョン 0.5.4 に更新されました。 今回の更新により、アップストリームによる修正や向上が適応され、
Marvell RAID バスコントローラ MV64460、MV64461、MV64462 に対するサポートが追加されました (
BZ#485126)。
qla2xxx
ドライバがバージョン 8.03.00.10.05.04-k に更新され、
FCoCEE (Fibre Channel over Convergence Enhanced Ethernet) アダプタがサポートされるようになりました。 今回のリリースでは、以下を含むアップストリームによるバグ修正も
qla2xxx
に適応されました (
BZ#471900,
BZ#480204,
BZ#495092, and
BZ#495094)。
OVERRUN
が 4GB アダプタや 8GB アダプタを処理する際に検出された不具合が修正されました。
すべての vports
に非同期イベントが警告されるようになりました。
QLogic 2472 カードでカーネルパニックが発生するバグが修正されました。
stop_firmware
コマンドの最初の試行がタイムアウトだった場合、リトライが実行されなくなりました。
固定 optrom
サイズを基にセクタマスク値が決定されないようになりました。
マルチパスデバイスでの I/O 処理中にパス障害が頻繁に発生するバグが修正されました (
BZ#244967)。
ドライバソースコードが kABI 対応になりました。
メモリーの開放後に dcbx
ポインタが NULL
に設定されるようになりました。
この他に、qla2xxx
ドライバに含まれる qla24xx
ファームウェアと qla25xx
ファームウェアがバージョン 4.04.09 に更新されました。
qla4xxx
ドライバが更新され、ドライバの障害リカバリが改善されました。 今回の更新により、ホストアダプタで未処理のコマンドが検出されるとアダプタがリカバリできない原因となっていたドライバのバグが修正されました (
BZ#497478)。
今回のリリースには
qlge
ドライバが含まれています。 このドライバは、
QLogic FCoE 10GB アダプタのイーサネットサポートを追加します (
BZ#479288)。
技術プレビューの機能は、現在 Red Hat Enterprise Linux のサブスクリプションサービスではサポートされず、機能的に完全ではないため、一般的に実稼動環境への使用には適していません。技術プレビューの機能は、将来的な機能をお客様にお試しいただくよう同梱されています。
A. 改訂履歴
改訂履歴 |
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改訂 0.4 | Thu Jul 23 2009 | Domingo Don |
SME 技術リビューのストレージドライバに関する更新を処理 |
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改訂 0.3 | Thu Jul 02 2009 | Lerch Ryan |
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改訂 0.2 | Wed Jul 01 2009 | Lerch Ryan |
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改訂 0.1 | Tue Apr 21 2009 | Lerch Ryan |
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